ショートショート作品 No.001

『警告』

 彼は廃墟と呼んでもおかしくないビルの一角で、コンクリートの壁を背にナンブ・ウルトラ・38の初弾を薬室に送り込んだ。ガチャッと時代を感じさせる金属音があたりにひびいた。警察の予算が少なく、レーザー・ガンを支給してもらえないことを彼はうらめしく思った。
 今の音は、奴にも聞こえたはずだ。
 金属音がした。
 どうやらむこうの銃も旧式らしい。だが、そんな事は問題ではない。銃が旧式だからといって、楽につかまえられる様な相手ではないのだ。これまでに彼の同僚が何人も奴の凶弾にたおれている。その中には、彼の親友も含まれていた。
 ふと、胸の中で恐怖の感情が頭をもたげているのに気付き、彼は舌打ちをした。たしかに彼はベテラン刑事とは言えないが、少なくとも新米ではない。ある程度感情を理性でコントロールする術は心得ているつもりだった。
 彼は心の中でつぶやく。
「なぁに、簡単な事さ。」
「ここから飛びだし、奴の名を呼んで警告する。」
「それでも抵抗する様なら射殺。」
「これで終わりだ。」
「・・・あれほど練習したんだ。やってみせる!」
 彼はもう一度口のなかで練習し、意を決して飛びだした。
「警察だ!手をあげろ!ジュゲムジュゲムゴコウノ・・・」
 銃声がひびいた。


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