【映画の感想】(ビデオにて鑑賞)

『交渉人』
★★★

 かなり派手な銃撃戦があったりするが、観ていてスカッとするようなものではない。緊迫した駆け引きがあったりはするが、謎解きであっと言わせてくれるようなものではないし、広告の謳い文句にあったような「頭脳戦」というほどのものでもない。内容的には要するにサスペンスもので、別段目新しいところもない。私には、なんだか中途半端な作品に思えた。
 この作品の最大にして唯一の魅力は、ストーリーの先が読めないことだ。これはサスペンスを売りにする作品では最も大切なことだろう。だから、この作品はサスペンスものとして駄作ではないと思う。既に何度も使い古されたセオリーをただなぞるだけでなく、次にどうなるのかと観客を迷わせる努力を一貫して続ける姿勢は貴重だし、私としても賞賛したいと思う。しかし、そうして観客を振り回しつつ引っぱって行った先のストーリーがとくに意外性もなく、強力な説得力もないものでは、観終わった印象が「ふーん」と気の抜けたものになってしまう。
 「真犯人」が誰なのかも観客には最後まで判らないが、判るような材料が何も提示されていないのだから判らなくて当たり前だし、その状態で「この人でした」とやられても、やっぱり「ふーん」なのだ。「意外な犯人」が判明したのなら、観客には「そうか、考えてみりゃ当然そうだよなあ」と思わせてくれないと納得出来ない。単に「意外なだけ」の犯人を設定するのなら、誰にだって出来るのだから。

 これからどうなるのかが読めないので観ている最中はどんどん引っぱられるのだが、終わってみれば「単にそういうこと」でしかなく、「ふーん」という感想しか出て来ない。観ている最中は楽しめたのだからそれでいいじゃないかと言われればその通りなのだけれど、私としてはやっぱり「半端」という印象が否めない。

2000/04/30
『交渉人』
監督:F・ゲイリー・グレイ
撮影:ラッセル・カーペンター
音楽:グレイム・レベル

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