【映画の感想】

『ファイナル・ディスティネーション』
★★★★

 「お約束ホラー」の新境地、というところだろうか。内容的には要するに、高校生の主人公を中心とするグループが一人一人殺されて行くという例のアレなのだが、もはや煮詰まりまくって腐りかけているこの路線を、この作品は見事にリフレッシュさせている。
 なにしろ、この作品では主人公たちを死に致らしめるのが殺人鬼でも怪物でもエイリアンでもなく、なんと「運命」なのだ。主人公の予知夢によって飛行機事故から逃れてしまった「死ぬはずだった」面々を「運命」が殺しに来る、というわけで、こういう「荒唐無稽なりに筋が通っている」設定というのがまず私好みだ。そして、殺しに来るのが運命であるからには、殺され方はもはや掛け値なしに「何でもアリ」なのだ。階段から足を踏みはずして転落でもいいし、突然頭の上にヘリコプターが落ちて来てもいいわけで、そうなると観ている方としては、画面に包丁が映れば「ああ、これが落ちて来るんじゃ…」と思い、電球が映れば「ああ、これが破裂するんじゃ…」と思い、つまりは「お約束ホラー」の基本要素であるところの「ああっ、もう来るぞ、もう来るぞ、どこから来るんだ…!?」というスリルを大いに味わうことが出来るという寸法なのだ。近頃ではいくら殺人鬼がナタを振り回して襲いかかって来てもこういうスリルはトンと味わえなくなっているので、このアイディアは拍手モノだと思う。そして、実際に起きる「運命による殺人」は単純に何かが破裂したり落ちて来たりというだけのことではなく、そういった要素が連鎖して襲って来たりするというところもなかなか見物だ。

 残念なのは、終盤で主人公が襲い来る「運命」と「戦う」ところに今一つ醍醐味が感じられないこと。そりゃあまあ、相手は何でもアリの「運命」なのだから、いくら勇敢に立ち向かったところで説得力のある「戦い」を演出するのは難しいと思うが、前半でちょっと驚かせてくれただけに、少々後半で気が抜けたような印象になってしまったのが惜しいと感じた。また、主人公とヒロインとの結びつきの描き方も、もう少し頑張って欲しかった。「単にくっついただけ」でもないような、わりといい感じの演出が多少入っていただけに、もう少ししっかりと二人の絆に説得力を持たせていれば、身を挺してヒロインを救おうとする主人公の頑張りに感情移入を誘うことも出来たのじゃないかと思えて、これもかなり惜しい気がした。
 まあもっとも、この手の作品にスリル以上の何かを期待するのはかなり贅沢なことなのだろうとは思うが、そんな贅沢な欲求を感じるくらいにこの作品の出来は良いのだろう。

 「『13日の金曜日』の第一作とかは好きだったけど、最近のホラーはちょっとねえ」という向きに、強くお勧めの作品。

2001/01/26
『ファイナル・ディスティネーション』
2000年アメリカ作品
監督:ジェームズ・ウォン
脚本:グレン・モーガン/ジェームズ・ウォン/ジェフリー・レディック
撮影:ロバート・マクラクラン

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