【映画の感想】

『パール・ハーバー』
★★

 公開前から非常に色々な意味で注目され、また話題にもなっていた作品。日本軍による真珠湾奇襲攻撃を背景に若者の恋愛メロドラマを描いて『タイタニック』ばりの娯楽大作に仕上げようという企画からして凄いが、ハワイ沿岸に停泊したアメリカ海軍の空母の上で試写会をしてしまうというパフォーマンスも凄ければ、それに協力しちゃうアメリカ海軍も凄い。そして、一つの作品を欧米では戦争スペクタクルドラマとして、日本では大河恋愛ドラマとしてアピールするというプロモーション姿勢も凄い。とにかく、作品の出来とか内容云々以前にアメリカ映画界の底力と面の皮の厚さを見せつけられて、チョーびっくりの作品なのだ。
 で、まあ、そんな状況を見せられてしまうと、映画のプロモーションって物凄くいい加減で不誠実なものみたいだなあと疑わざるをえないが、実際そうだったので仕方がない。この作品の宣伝文句にあった「大河ロマン」というのは完全な嘘っぱちだし、「俺は戦う。愛するものを守るため。」だとかいう類いのいくつかの寒気のするコピーも、内容とは一切関係のない捏造だ。こういうコピーを書いている人は、当該作品を全然見ていないんじゃないかと思える。作品を観た上で全然関係のないコピーを書いているんだとしたら、それはそれで凄い才能なのかもしれないが。(笑)

 さて、外野の話はこれくらいにして、肝心の作品について。
 この作品主なウリは、CGを駆使して描かれた迫力満点の真珠湾攻撃の戦闘シーン映像と、それを背景に織り成される青春恋愛ドラマである。私の感想としては、はっきり言って恋愛ドラマの方は全く面白味がなかった。プロットとしてはありがちだし、脚本も演出もとくに気が利いているとは言い難く、そして何より人物が全く描けていない。とくにヒロインのイヴリンはキャラクターとしての肉づけはおろか骨格さえ作られていないという感じで、単に「ヒロイン」というハリボテのように思える。こういうのを見たらフェミニズム団体が石を投げて来るんじゃないかとか、余計な心配までしてしまう。それでもまあ、お色気とか可愛らしさとかで、フェミニストが見たら怒るような「形としてのヒロインの魅力」を前面に出すというのもアリだと私は思うが、イヴリンはそういう風にもなっていない。結局、二人の類型的な男の間で悩み揺れ動くハリボテのヒロインに全く感情移入も同情も出来ず、私としては全く楽しめなかった。
 もう一方のウリである戦闘シーンだが、これはかなり面白かった。まず、旧来の「戦争スペクタクル」とは明らかに一線を画す画面作りがなされている点が面白い。カメラワークやカット割りなどが、日本のアニメを髣髴とさせる娯楽性の高い演出に満ちているし、「戦闘シーン」のそもそもの扱いが臨場感重視の方向にシフトしている感じで、ちょっと新鮮に思えた。日本軍の奇襲を受けて爆弾がボコボコ落ちて来ているさなかで、呆然と歯を磨きながら空を見上げている米兵がいるカットなど、妙な説得力がある。
 また、真珠湾攻撃を扱っているからには日本軍側の描写も出て来るのだが、例によってアメリカ人による「トンデモ日本」を見せられるのか、しかも今回は「悪役」として一体どんなことになっちゃってるんだろうと思っていたら、これが意外にイケていた。野原のまん中に沢山のノボリを立てて作戦会議をしちゃってたりという「勘違い描写」は随所に見られるし、明らかに日本人から見たら「変」な日本が描写されているのだが、その一方で「旧日本的なカッコ良さ」がちゃんと盛り込まれているため、印象としては魅力的な悪役という感じになっている。これはちょっと意外な収穫だった。真珠湾攻撃の準備を進める日本軍の重々しい描写が時折入るために、メインストリームとして展開するタルい恋愛ドラマを退屈せずに見ていられた、とも言えそうだ。ここで描かれる「妙なカッコ良さ」を持つ日本軍を見て、なるほどアメリカ人はこういうイメージで旧日本軍を見ているのかな、などと思いつつ、でもよく考えれば私だって色々な本や映画なんかから得たイメージでしか旧日本軍を知らないのだから、あながちアメリカの描く「トンデモ日本」を馬鹿にしてばかりはいられないよなあ、ということにも気付かされるのだ。

 この作品を一言で言い表すと、「戦争エンターテイメント映画」ということになると思う。考えようによっては恐ろしい話だが、戦争を扱った娯楽映画というのは昔からいくつもあったのだし、今さら目くじらを立てても仕方がないだろう。この作品が目新しいのは、従来のその手のアメリカ映画とは違って「アメリカ側の負け戦」を扱っていながら、それを「悲劇」としてエンターテイメント化してしまっていることだ。もちろん、日本映画によくある自虐と自己憐憫に浸り切ったようなソレとは全く違う仕上がりになっているし、これはある意味新機軸なのかもしれない。この作品では「戦争そのものが悲劇」なのではなく、「アメリカ軍に大きな被害が出たことが悲劇」だという扱いになっている。なるほど、アメリカではそういう見方もアリ…というか、それが一般的な見方なんだなあ、と改めて感心してしまう。「この戦争は大きな試練だったが、それによってアメリカは強くなった」なぁんてことを締めくくりのナレーションとして言えてしまうアメリカ人って、やっぱり凄いやね。

2001/07/14
『パール・ハーバー』
2001年 アメリカ作品
監督:マイケル・ベイ
脚本:ランダル・ウォレス
撮影:ジョン・シュワルツマン
出演:ベン・アフレック/ジョシュ・ハートネット/ケイト・ベッキンセール/アレック・ボールドウィン

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