【映画の感想】

『スターウォーズ エピソード2』
クローンの攻撃
★★★

 意外に面白かった。エピソード1でガックリ来ていただけに、正直言ってあまり期待していなかったのだが、これはかなり楽しめた。前作との一番の違いは、ストーリーがちゃんと進行していることだろう。個々のキャラクターの動きなどに説得力がないのは残念だが、とにかく「一つ一つの事件がつながって歴史が動いている」感じが伝わって来る。これが大河物語の最大の強みであり魅力のはずなのだから、「待ってました」というところだ。
 そして今回はそれだけにということか、戦争がわりと戦争っぽく描かれている。相変わらず「ロボットや原始的な民族はどんどん死んでヨシ」的なノリは見え隠れするのだが、今回はジェダイの騎士もクローン兵も同じようにパタパタと死んで行くので、あまり違和感がない。むしろ人死にがあまりにもサラッと描かれ過ぎていないかと心配になるくらいだ。遺伝子操作された大量生産のクローン兵は、果たして人間ではないのか、どんどん死んじゃって問題ないのか、といった疑問が新たに湧いて来たりもするのだが、その辺はエピソード3で何らかの扱われ方をするかもしれないので、とりあえずは保留といったところか。
 次作への持ち越しという要素はそれだけではなく、この作品では非常に沢山の演出や伏線をぶちまけるだけぶちまけて観客を圧倒し、「じゃ、あとは次作で」と引いてしまっている印象だ。言ってみれば映画1本分の予告編が作られているようなもので、それで面白くならないわけがない、とも思える。してみると、3本組みの2本目というポジションは、作り手にとって非常に有利なものなのだと改めて気付いた。だとすると、『マトリックス2』にも期待出来るかなあ、などとちょっと思ったりもして。

 閑話休題。
 上記のようにストーリーの進行をかなり楽しめた本作だが、一方で残念だったのは、キャラクターに面白味がないこと。とくに、主人公アナキンとヒロインのパドメに魅力がない。アナキンはもう徹頭徹尾典型的なアメリカの頭の悪い若者で、個性も何もあったものじゃない。本作と次作では「アナキンがいかにしてダースベイダーになったのか」が最も大きなテーマのはずなのだが、本作のアナキンにはそういった微妙な危うさのようなものが全く感じられない。恐らくはその「最初のキッカケ」となるエピソードが本作の中ではっきりと描かれてもいるのだが、それに対してアナキンは少々泣いて見せるだけでオシマイだし、演出としても非常にあっさりしたもので終わっている。せめてもう少し内面の葛藤のようなものを見せてくれてもいいんじゃないかと思うのだが。結局、全ては次作でということなのだろうか。パドメの方は、自らの立場と職務を重んじる理性的な面と若々しい情熱を併せ持つという設定ではあるようなのだが、結局のところその行動は全てが無責任で、ハリウッド映画のヒロインたるヤンキー娘のパターンに完全にハマっている。おいおい、とツッコミを入れたくなる場面、多数だ。本作ではこの二人の「禁断の恋」がメインのオカズの一つであるはずなのだが、どうもこれは、昼メロ並みにつまらない。パドメがアナキンのどこに惹かれて行ったのかも全く伝わって来ないし、そもそもこの「若い二人」を二人きりでナブーに行かせた指導者たちの意図もわからない。わざわざ厄介ごとの種を増やしているだけにしか思えないのだが。
 ストーリー上の演出にかかわることで言えば、アナキンが「若くて未熟ながら飛び抜けた能力を持っている」ことが全然実感として伝わって来ないのも問題だろう。それを表現する演出が決定的に不足しているのだと思う。実際、パドメの護衛の任務を受けていて、しかもそのパドメを愛してしまってもいながら、客観的に見ると全くパドメを護れていないのだから、あきれてしまう。R2-D2の方がずっと役に立っているんだもんなあ。こんな奴が暗黒面に落ちたって、別に大したことないんじゃないの、とか思ってしまうのは私だけだろうか。

 キャラクター的には、むしろ意外に単細胞でお調子者だったオビ=ワンの方に魅力を感じた。もっとも、こちらもジェダイ・マスターにしては少々ドジが過ぎるし、戦闘力も低そうに見えるのだが。
 その一方でとにかくカッコイイのは、ヨーダだ。何しろ本作では、単独の格闘から軍隊の指揮まで、八面六臂の大活躍なのだ。キャラクター的に、軍隊を指揮する姿には多少の違和感があったりもするが、それはまあ「本人も好きでやってるわけじゃないだろう」と勝手に解釈するとして(笑)、とにかく一々カッコイイ。ライトセーヴァーによるチャンバラでは、スピード感、迫力ともにシリーズ中最高のシーンを見せてくれた。「映像技術の進歩がこれを可能にした!」とか言われても普段は「あ、そう」としか思えない私だが、これには素直に拍手を贈りたいと思った。しかし、ヨーダのチャンバラが素晴らしかっただけに、それと比べると皮肉にも人間同士のチャンバラのヌルさが露呈してしまっている面がある。前作ではカンフーばりのアクションを導入して新境地への予感を見せてくれていたのだが、本作ではまたそれが鳴りを潜め、日本の殺陣を見慣れた目にはどうしてもヌルく見えるチャンバラに戻ってしまっている。次作では、明らかにサムライを意識したジェダイという地位がますます大きな意味を持つと思われることでもあるし、チャンバラに関してもまた何らかの進歩があることを期待したい。
 戦闘シーンということで言えば、「ジェダイの団体戦」はなかなかにツボを押さえた、「燃える」演出だったと思う。あとは、もう少し画面演出としての見せ方を工夫してくれると、更に「燃える」んじゃないかと思う。サンライズアニメなどを参考に(笑)、ぜひ研究して欲しいものだ。

 映像的な面では、正直言ってあまり感心しなかった。自然物、人工物ともに「景色」に関してはなかなか凝っているなあと思ったが、それもそれだけのことで、とくに凄いとかリアルだとかは感じられなかった。とくに目立ったのは質感としての合成の違和感で、この辺に関してはだいぶ前から徐々に改善されているところだと思うのだが、本作では完全に一昔前のレベルにしか見えなかった。『タイタニック』あたりの方が、まだごまかし方が巧かったように思う。
 もっとも、レトロ・テイストを前面に押し出すことも計算のうちでありそうなこのシリーズにおいては、そういった技術的な細かい違和感などはあまり重視されていないのかもしれない。メカデザインに関してもわざわざ60年代SFのエッセンスを散りばめているようだし、それがまた作品全体に微妙な「懐かしさ」を醸し出していることも事実だ。CGで描かれたスペースシップが「まるで糸で釣られているかのような」動きをするのを見せつけられれば、なるほどやっぱり狙っているんだな、と思わざるを得ない。ただ、前作を観た時に「ああ、スターウォーズってこうだったよなあ」と感じた懐かしさが、本作では「ああ、昔のSFってこうだったよなあ」という懐かしさに変わっているのは、少々不思議だ。これは単純に、前作と本作の間が時間的に短かったからというだけのことなのか、それとも何か別の要素が働いているのか、ちょっと私には判断がつかないのだが。

 さて、そんなこんなで本作はかなり楽しませてもらったが、果たして次作では本作でぶちまけた演出や伏線がキチンと刈り取られ、収拾される様を見せてくれるのか、それともいい加減なごまかしやおとぼけでガッカリさせられるのか、今から期待と不安が高まってしまっている。どちらにしろ、次作も確実に観に行くことになるわけで、これはつまり製作者側の術中に完全にハマっているということではあるのかもしれない。まあ、それだけの価値はあるだろうと思うので、いいんだけど。

2002/08/06
『スターウォーズ エピソード2』クローンの攻撃
2002年 アメリカ作品
監督:ジョージ・ルーカス
製作:リック・マッカラム
製作総指揮:ジョージ・ルーカス
脚本:ジョナサン・ヘイルズ/ジョージ・ルーカス
撮影:デヴィッド・タッターサル
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ユアン・マクレガー/ナタリー・ポートマン/ヘイデン・クリステンセン

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